賃金の端数の切り下げはやめよう
住んでいる場所の近くの居酒屋に、でかでかと求人バナーが貼ってありました。
客向けの宣伝より目立っていて、相当求人に力を入れてるんだろうなと感じます。
しかしこのバナー、よくみるとちょっと労働基準法を誤解している部分があります。
「1日8時間を超える勤務は時間外手当1分ごとに支給」
この部分が、労務を仕事で経験してきた者にとって、引っかかるところです。
賃金支払の原則
賃金の支払いは、労働基準法第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされています。
この規定により、時間外の労働時間の端数を切り捨てることは、違法となります。
ただし、端数処理の例外に関する労働基準局長名による通達の中で、1ヶ月の労働時間に端数が生じた場合は、30分未満の時間は切り捨てて構わないとなっています。
昔は切り捨てが当たり前だった
私が若きころ、それこそうん十年前ですが、その時のアルバイトでは、確かに15分単位1時間単位とかで、労働時間を切り捨てられていたように覚えています。
その後就職してアルバイトの管理をするようになった時に、上司に言われるままに15分単位で切り上げ処理をしていて、アルバイトからは「ずいぶんいい会社ですねえ」なんて言われたこともありました。
切り上げなら全く問題ない
端数処理の件ですが、端数処理で時間をすべて切り上げた場合は、もちろん全く問題ありません。
法律の規定より手厚い待遇になっている場合は、例え法律どおりにしていなくても全く問題ありません。
今は端数処理のほうが手間で面倒
昔は、タイムレコーダーの記録はすべて電卓で計算していたので、どうしても端数処理をしたくなりました。
しかし今は、勤怠計算は最低でもエクセルなどの表計算ソフトを使うでしょうから、端数処理をするほうがかえって面倒くさいです。
勤怠管理を自動化するシステムもずいぶん安価になってきましたし、下手に端数処理するよりは、タイムカードの打刻どおり処理したほうが社員のモチベーションは上がり、事務処理の手間も上がりで、いい事ずくめのような気がします。
目先にとらわれずに将来を
「時間外手当を1分単位で支給」は、別に違法でもなんでもないので、このバナー自体に特に問題があるわけではありません。
よく見るとその他にも、コミュニケーションを良くするための努力とか、有給休暇完全取得のための制度構築とか、自己申告制度とか、入社祝い金制度もあるとのことで、求人のためにいろいろな策を講じていることがわかります。
目先の費用にこだわることなく、目先の出費は投資と考えているような感じで、好感が持てます。
目先の費用にこだわることなく、投資の意義を考えながら会社の経営をしたいものです。