働き方改革法案の概要

6月28日に可決された「働き方改革法案」の成立により、多くの労働関係の法律で新しい制度が加わったり改正されることとなりました。

働き方改革法案については、報道機関により随分とネガティブな感じで報道されていますが、実際には労働時間の抑制など、今まで以上に労働時間の削減に突っ込んだ内容になっています。

働き方改革法案の内容の概要についてチェックしてみました。

新設された制度

まずは、新設された制度から見ていきましょう。

特定高度専門業務・成果型労働制(新設)

「高度の専門的知識等を要する」、「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」業務について、休日などについて労働基準法の最低要件を満たしつつ、労働時間についての自由度を高めた制度です。

対象業務

  1. 金融商品の開発業務、ディーリング業務
  2. アナリストの業務(企業・市場などの高度な分析業務)
  3. コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案または助言の業務)
  4. 研究開発業務  など

対象労働者

対象業務に従事している労働者で、以下の手続きを踏んだものが対象となります。

  1. 書面による合意に基づく職務の範囲内で労働する者
  2. 平均給与額の3倍を相当程度上回ること(具体的な年収額は、「1075 万円」を目安に法案成立後に審議会で検討の上、省令で規定する)

健康管理に関する各種施策を実施

  1. 健康管理時間
  2. 健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置
  3. 面接指導の強化など

使用者は、対象労働者の健康管理時間(「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」との合計)を把握するために、以下のいずれかを講じることが制度導入要件となります。

  • 24時間について継続して一定以上の休息時間を与える(勤務間インターバル規制)ものとし、かつ、1カ月の深夜業は省令で定める回数以内とする。
  • 健康管理時間が1カ月または3カ月につき一定の時間を超えないこととする。
  • 4週を通じ4日以上かつ1年を通じ104日以上の休日を与える。
  • 健康管理時間が週40時間を超え、その超えた時間が月当たり100時間を超えた労働者については医師による面接指導を義務づける。

時間外労働の上限規制(新設)

従来は36協定の特別条項を定めることにより、月100時間以上の時間外労働が可能でした。

新しい法案では、時間外労働が最大で月100時間以内という制限がつくこととなりました。

この規定に違反した場合の罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)も規定されたことが、最大の特徴です。

なお、建設事業や医師等に関しては一定期間適用が猶予され、また新技術の研究開発業務に従事する者に関しては、当該規制が適用されません。

年次有給休暇の確実な取得義務(新設)

企業は、年次有給休暇を10日以上付与される労働者について、5日分を、付与日から1年以内に取得させなければならなくなりました。

この5日間については、企業が時季を指定して取得させる必要があります。

ただし、労働者が自身で取得した年次有給休暇日数が少ない5日を超える場合や、計画的に有給休暇を付与させた日数が5日間を超える場合は、この対象とはなりません。年次有給休暇の取得日数について

本規定に違反した場合、罰則(30万円以下の罰金)があるのが特徴です。

勤務間インターバル制度の普及促進(新設、努力目標)

勤務間インターバル制度とは、終業時間から次の始業時間までに、適当な時間を空けるこ制度です。

例えば、インターバル時間を12時間と定めた場合、23時に終業した場合労働者は、翌日11時までは勤務させることが出来ません。

ただし、この制度に関しては、努力義務となります。

変更された制度

続いて、従来からある制度の運用方法が変更されたものを見ていきます。

フレックスタイム制の見直し(変更)

このフレックスタイム制の「清算期間」が、従来の1ヶ月から3ヶ月に延長されることになりました。

3ヶ月の労働時間の合計に変更はありませんが、1ヶ月を超える繁忙期などに労働しても、3ヶ月合計の労働時間が法廷時間内であれば、時間外労働手当を支払う必要がなくなりました。

変更 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し(変更)

2010年の労働基準法改正により定められた、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を50%とする規定は、2023年4月1日から全ての企業に適用されることとなりました。

まとめ

働き方改革法案は、報道では、高度プロフェショナルが無際限に働かされる法案のような印象になっていますが、実際には一般労働者に関しては、月の残業時間の上限が規定されたり、有給休暇の取得をぎつづけしたり、然も違反には罰則まであるという、かなり労働者に寄り添った改革であることがわかります。

一般労働者向けの変更が多いことから、多くの会社で就業規則や36協定の変更が必要になりますので、早めに準備しておきたいところです。

みんなの総務部では、働き方改革法案のための就業規則や規程の変更のご相談に応じますので、是非お問い合わせください。

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